引き揚げ

下宿を払った。



室内をがらんどうの空間に片付けてたまった汚れを拭っていると、ふっと気持ちが軽くなる反面、大事な何かを故意に流し去ってしまったかのような後ろめたさを感じた。


おじさんはこの二年間を忘れない。



テツガクなんて高尚なもんじゃないけれど、己の自然や生と真摯に向き合った…というとどう贔屓目に見ても格好良すぎで、直面せざるを得ない環境だったと言うべきだろう。



またひとつ、面の多い立体になったということだろうか。